makiolog

好きに書いています

「緊デジ」のひどすぎる顛末を聞いて

昨日はリブロ池袋店のブックフェア「東北 <可能性としてのフロンティア>」を見に行き、関連イベント「仙台オヤジ編集者、池袋で語る」を聞いてきた。

仙台の出版社〈荒蝦夷〉の土方正志さん、プレスアートの川元茂さん、東北大学出版会の小林直之さんは「仙台オヤジ編集者3人衆」を名乗って、年間ベストテントークイベントや3社合同ブックフェアなどを展開しています。今回は土方さんと川元さんに被災地の出版社としての2年余りを語っていただきます。司会はプレジデント社の石井伸介さん(仙台出身)です。

震災直後のことから、現在の街や人の様子、地方出版や書店の話など、なかなか聞くことが出来ない現場の話は、ただ聞くことしかできないけれど、聞けてよかった。
そして後半、それまでとは違う様子で話題になったのが、「緊デジ」。
「経済産業省「コンテンツ緊急電子化事業」のことだが、これに対し、相当な怒りをもって顛末を話されていた。

これは「国内の出版物を2012年の1年間で6万冊電子化することを目指す」事業で、概略にこう書いてある。

電子書籍市場の拡大及びそれに伴う被災地域の知へのアクセスの向上に向けて、書籍の電子化作業に要する製作費用を国が補助します。

つまり被災地支援が目的で、復興予算から補助金10億円計上されたんだという。
実際にその会議に出た仙台の出版社プレスアートの川元さんによると、経産省職員が壇上で「やりました、みなさんのために10億円獲得してきました!」という調子で説明していたとか。
でも内容が今ひとつはっきりしてなくて「詳細はwebにアップしますので」と、続きはwebでみたいなあやしい様子。そのうち補助対象出版社の定義がこれだった。

①日本の国内企業であること。中小企業であること
②パブリッシャーズフォーラム(有識者委員会)へ参画している出版団体の会員、(社)日本出版取次協会へ加盟の会員と取引があること、又は(株)地方・小出版流通センターと取引があること
③ISBN出版社コードを保持しており、以下の義務を履行していること
・国際本部運営資金(旧:国際本部分担金)を支払っていること
・書籍JANコードを使用している出版社は書籍JANコード登録申請及び3年ごとの更新を行っていること
④日本出版インフラセンター 商品基本情報センターへ課金承諾書を提出していること

このうち②が問題で、地域の出版社でその地域中心に配本している場合、取次を利用せず書店と取引しているところがたくさんある。なのにこの条件があるため、地域で直販で商売している地方出版社は対象にならない。

しかも書目選定の基本的な考え方として、

以下の優先順位に則り、書目の選定を行う

① 被災地域における知へのアクセスの向上
② 被災地域における新規事業の創出や雇用の促進
電子書籍市場の活性化

というが、実際電子書籍化した6万点が発表になったら、半数近くがコミックスだったというのだ。全点を黙視した川元さんは、被災地域関連書籍は全体の2〜3%だったという。
復興予算10億円使って電子書籍化したのは、東京の大手出版社のコミックス中心。これについて、当該出版社はどう考えているのか。
出版業の端くれにいる人間として、しかも前回電子書籍について書いたばかりだったので、背筋が凍り付きました。
当然ことながら、被災地出版社は怒っています。ものすごく怒っている。
出版に関わる方は、下記ブログ、資料をお読みいただきたいと思います。

プレスアート・川元さんのブログ

復興予算流用の指摘がある緊デジについて。地方出版社の立場から。


荒蝦夷・土方さんの記事(「出版ニュース」2013年08...上)

f:id:makiolog:20130901143248j:plain