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魚久バイトの思い出*

あれは大学1年生の冬のこと。
キャンパスを友人と歩いていると、顔見知りの女子に、
「ねえねえ、バイト探してる人がいるんだけど、やらない?」
と話しかけられ、まさに探し中の男子のところに連れて行かれたのでした。
聞けばその男子、お家が魚屋さんで、年末年始非常に多忙になるので、バイトを急募しているとか。
魚屋のバイトとはなんぞや、とは思ったものの、わりあいスマートな男子であったし、暇を持て余していたので、その場で気軽に引き受けたのでした。


その魚屋さんは、人形町というところの、老舗の粕漬店。
家庭の夕餉用というよりは、お歳暮、お年始などおつかいものにする高級な魚の店のようでした。
年末の店は大変な混みよう、お持ち帰りも発送もひきもきらず。
注文表を見ながら「銀だら2、金目2、イカ1」などを箱につめたり、
ヤマトの伝票に、手書きで宛名を延々と書き込んだりしたのでした。
10代の若者にとって、粕漬けの魚などもっとも嫌なおかずであったので、何故粕漬けだけの店がそんなに人気なのか不思議でしたが、おみやげにもらって食べてみて納得。
ふだん家で作る鍋に入っている銀だらとは、別物でした。
そのバイトもこの冬だけで、一緒に働いていた子達もスマート男子も、その後のつきあいは特にありませんでしたが、
銀だらの存在は、わりと深く刷り込まれたようです。