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天明屋尚「傾奇者」

現代アート本のレビューで、個人的すぎて書ききれなかったので。


天明屋尚氏の「ガンダム」絵画、クリスティーズのオークションで6300万円で落札

【Technobahn 2008/6/5 01:30】最近になってから頭角を現してきている現代美術作家の天明屋尚氏が描いたガンダムの絵画「RX-78-2 傾奇者 2005 Version」が4日、香港で開催されたクリスティーズのオークションで競売に掛けられ4800万香港ドル(約6300万円)で落札された。

 「RX-78-2 傾奇者 2005 Version」は2005年にサントリーミュージアムで開催されたガンダム関連の現代美術作品を集めた展覧会向けに制作されたものとなる。
 天明屋尚氏は現代的なテーマを日本画的な手法を用いて描くことで最近、注目を集めてきている現代美術作家となる。

 日本の現代美術作家の作品の高額落札例としては、村上隆氏によるアニメフィギュア「My Lonesome CowBoy」が昨年、1516万ドル(約15億円)で落札。今回の落札価格は村上氏の「My Lonesome CowBoy」に次ぐものとして注目を集めている。


というニュースに驚愕してしまったわけです。
天明屋さんといえば、PARCO時代、『傾奇者』という作品集を担当させていただいたのでした。
当時は、タトゥー雑誌に連載していたり、書店ナディフの一角で個展をしたり、まだアーティストとしてほとんど知られていないしていた頃。
なにがきっかけで知ったのかまったく覚えてないけど、ナディフで見た、日本画とグラフィティ、現代風俗とかが交錯した絵にガーンと衝撃を受け、そのあとすぐにご本人にメールしたら返事をくれて、ミヅマアートギャラリーにたずね、本を作りませんか、と単刀直入に頼んだら、いいですよー、とのってくれたんだったっけ。
いやあ、懐かしいなあ。


本を出したのはその1年後くらい。編集に関してはそれなりにいろいろいろと、若干の困難もあったっけ。ふふっ。作品集はいい仕上がりに出来たけれどが、さほど大売れしたわけではありませぬ。現代美術の文脈の本流にいる作家ではないから、批評にもあまり登場しなかったし、やっぱり美術界も閉鎖的なのかも、とちょっと思ってた。

それがそのうち、海外のグループ展に参加し、ワールドカップサッカーのアートポスターに採用され、彼自身を描く短編映画が作られ、そして、今回の高値落札である。アーティストが一気に階段を駆け上るのを、目の当たりにした気がして、鳥肌ものです。天明屋さん、ほんとによかったですね。


これで一挙に有名になって『傾奇者』がもう少し売れてくれると、立ち去った版元にも著者にも利益が上がってちょっとは編集者としてお役に立つかしらと、本を紹介してみたりしました。


それにしても、彼の絵もあの頃はまだ手が届く価格で、結構何度も迷ったんだよなー。数年するとコレクターがついて買うことすらできなくなったのに。せめてエディションナンバー入りの版画と、いただいたアートポスターは大事にしたいと思いまする。


天明屋 尚 作品集 傾奇者 kabukimono

天明屋 尚 作品集 傾奇者 kabukimono