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好きに書いています

「奇跡のリンゴ」

生林檎、だからではないが、たまたま手に取り一気に読了。
久々、ノンフィクションで泣いた。
そのおいしさにネットで売り出すと10分で売り切れる「奇跡のリンゴ」。農薬散布が常識とされるリンゴ栽培で、30年かけて完全無農薬での栽培に成功した木村秋則さんのドキュメンタリー。
NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」で反響を呼び、茂木健一郎氏が本にすべき、と言ったらしい。

奇跡、でもあるが、それを引き寄せている木村さんが凄い。

機械好きの木村さんが書店でトラクターの本をとったとき、隣の本を落としてしまい、一緒に買ったのが無農薬農法の本だった。

無農薬にすると決めて、葉は枯れ、害虫は一向に減らず、何年間も毎日虫取りに追われるが、妻義父母ともに何も言わず一緒に虫取りをした。

5年経っても何の変化も起こらず、山で首を吊ろうと向かった先で、見事に実をつけたドングリの木を見つけ、木が育つ環境に目を向けることになった。

ようやく花をつけはじめ、最初は変人扱いをしていた回りの目が変わり、隣の農園は「木村さんのリンゴに農薬がかからないように」と、隣接する木を切ってしまった。

売り手がつかず、「食は大阪だから」と大阪駅住所の自分宛てにリンゴを送り、大阪城で売らせてもらった。そこで買ってくれた人から「こんなおいしいリンゴは初めて。また売ってください」と、手紙が来た。


ドラマチックな部分に引きづられまいと思いつつ、木村さんガンバレ、と応援している自分がいた。確かにこれはクオリアだったよ、茂木さん。
シーボルトが見た美しい日本の農園風景から始まるのがピンとこなかったが、文明が栄えたところはすべて砂漠になったというエピローグに、著者の巧みさも実感。


奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録


別件。
夏に取材させていただいた俵萌子さんが亡くなられた。お元気そうに飛び回っていて、多忙な中熱心にお話もしていただき、そのパワーに圧倒された。その直後に入院されて、校正紙も一時退院のときに見ていただき、自筆で「楽しみにしています」と書かれていたのだが。
仕事の短いかかわりとはいえ、お見舞いに伺うべきだったのでは、と悔やまれる。
心よりご冥福をお祈りいたします。